Cardarine、MK-677、SR9009は、販売ページやSNSではSARMsと並ぶことがある。
しかし、分類上はSARMsではない。
SARMsはアンドロゲン受容体(AR)に選択的に作用する成分群である。
Cardarine、MK-677、SR9009はARを作用点にしないため、SARMsには分類しない[1][2]。
作用点で分ける
| 成分 | 作用点 | 主な評価軸 | 関連ページ |
|---|---|---|---|
| Cardarine / GW-501516 | PPARδ | 脂質代謝、持久力、長期安全性 | Cardarine / GW-501516 |
| Ibutamoren / MK-677 | グレリン受容体、GH/IGF-1系 | 食欲、浮腫、血糖、睡眠 | Ibutamoren / MK-677 |
| SR9009 | Rev-Erb | 概日リズム、代謝、研究データの限界 | Stenabolic / SR9009 |
| Prohormones | 変換後のアンドロゲン作用 | HPTA、肝機能、表示成分 | プロホルモン |
| Peptides | GH、IGF-1、組織修復など | 目的、品質、注射管理 | ペプチド |
販売カテゴリでは「SARMs stack」と一括りになることがある。
薬理分類では、AR作動薬、PPARδ作動薬、GH分泌促進系、Rev-Erb系は別物である。
作用点が違えば、副作用、検査項目、競技規制、長期リスクも変わる。
Cardarine / GW-501516
CardarineはPPARδ作動薬である。
持久力、脂質代謝、脂肪利用と結びつく。
ARに作用するSARMsではないため、HPTA軸抑制だけでは分類できない[2][3]。
Cardarineの問題は、筋肥大薬としてのAR作用ではなく、代謝調整系の薬理と長期安全性である。
SNS上では「脂肪燃焼」「持久力」と短く語られやすいが、SARMではない時点で、AASやSARMsとは別の評価軸になる。
Ibutamoren / MK-677
MK-677はグレリン受容体作動薬である。
GH分泌、IGF-1、食欲、睡眠、水分保持、血糖と結びつく。
AR選択性で分類するSARMsとは別カテゴリである[2]。
MK-677では、アンドロゲン由来の女性化乳房やDHT変換より、食欲増加、浮腫、血糖、眠気、GH/IGF-1系の変化が主な評価対象になる。
SARMではないことは、安全性の証明でも、ホルモンに無関係という意味でもない。
SR9009
SR9009はRev-Erb作動薬として研究された化合物である。
概日リズム、代謝、エネルギー消費と結びつく。
SARMsではなく、代謝調整系のPEDである[2]。
SR9009は、販売上のイメージと研究データの距離が大きい成分である。
作用点がARではないため、SARMsと同じHPTA軸だけでは足りない。
研究段階の成分では、ヒトでの有効性、安全性、品質の不確実性が主な論点になる。
販売カテゴリではなく作用点
| 分類 | 主な追跡項目 |
|---|---|
| SARMs | テストステロン、LH、FSH、SHBG、脂質、肝機能 |
| Cardarine | PPARδ、脂質代謝、持久力、長期安全性 |
| MK-677 | GH、IGF-1、血糖、食欲、浮腫 |
| SR9009 | Rev-Erb、代謝、概日リズム、研究データ |
| Prohormones | 変換後のアンドロゲン作用、HPTA、肝機能 |
インターネット上でSARMとして販売された44製品の分析では、SARMではないibutamoren、GW501516、SR9009も検出されている[2]。
販売カテゴリではなく作用点で分類することが、最初の誤分類を防ぐ。
製品品質と未表示成分
SARMs周辺PEDでは、薬理分類だけでなく製品品質が問題になる。
表示成分が実物と違う、含有量がズレる、未表示成分が入る、研究用ラベルで販売される、といった問題が起こり得る。
JAMAの分析では、表示と実測内容の不一致や、別の活性成分の混入が報告されている[2]。
この問題は、Cardarine、MK-677、SR9009をSARMsと誤分類すること以上に実用上のリスクである。
ラベル名で判断しても、実際に摂取する成分、量、混入物が一致するとは限らない。
SARMsと周辺PEDの境界
| 誤解 | 実際の評価 |
|---|---|
| SARMsショップにあるものは全部SARMs | 販売カテゴリと薬理分類は別 |
| ARに作用しないならホルモンに無関係 | GH/IGF-1、代謝、血糖など別経路がある |
| SARMではないなら競技規制も軽い | 成分ごとの禁止カテゴリで評価する |
| 研究用なら自己責任で済む | 品質、含有量、混入物、健康被害の問題が残る |
| AASより穏やかなら検査不要 | 肝機能、脂質、ホルモン、血糖などの追跡項目は残る |
Cardarine、MK-677、SR9009はSARMsではない。
ただし、SARMsではないことは安全性の証明ではなく、別の作用点を持つPEDとして評価される。
分類ミスで起きる判断エラー
Cardarine、MK-677、SR9009をSARMsとして分類すると、追跡するリスクがズレる。
AR作動薬としてHPTA抑制だけでは、PPARδ、GH/IGF-1、Rev-Erb系の問題は拾えない。
| 誤分類 | 起きる判断エラー |
|---|---|
| CardarineをSARM分類 | HPTA抑制より代謝調整系と長期安全性が主要論点なのにズレる |
| MK-677をSARM分類 | 血糖、食欲、浮腫、GH/IGF-1系が軽視される |
| SR9009をSARM分類 | 研究データの薄さと代謝・概日リズム側の不確実性が抜ける |
| ProhormoneをSARM分類 | 変換後のアンドロゲン作用と肝機能が抜ける |
| PeptideをSARM分類 | 注射管理、品質、GH/IGF-1や修復系の評価が抜ける |
販売ページ上のカテゴリは、薬理分類ではない。
作用点を誤ると、検査項目、競技規制、危険性の見積もりまで連鎖してズレる。
周辺PEDの比較軸
周辺PEDは、筋肥大薬としてひとまとめにできない。
目的、作用点、検査項目、長期安全性の弱さを分けることで、SARMsとの差が明確になる。
| 分類 | 目的として語られやすいもの | 主な懸念 |
|---|---|---|
| SARMs | 筋量、体組成 | HPTA抑制、脂質、肝機能、製品品質 |
| PPARδ作動薬 | 持久力、脂質代謝 | 長期安全性、競技規制、研究用流通 |
| GH分泌促進系 | 食欲、睡眠、回復感 | 血糖、浮腫、IGF-1、眠気 |
| Rev-Erb系 | 代謝、脂肪燃焼、持久力 | ヒトデータの限界、品質、規制 |
| Peptides | 修復、回復、GH/IGF-1 | 注射管理、品質、適応外使用 |
SARMsと周辺PEDの境界は、販売名ではなく作用点で決まる。
名前が同じ棚に並んでいても、身体側で起こる問題は別の場所に出る。
関連ページ
出典
- NCBI Bookshelf: Selective Androgen Receptor Modulators (NCBI Bookshelf / Overview) ↩
- Van Wagoner RM, et al. Chemical Composition and Labeling of Substances Marketed as Selective Androgen Receptor Modulators and Sold via the Internet. JAMA. 2017. (jamanetwork.com / Overview) ↩
- World Anti-Doping Agency: 2026 Prohibited List (World Anti-Doping Agency / Overview) ↩