メンタル副作用の比較では、「どの薬剤が一番危険か」だけを見ると実態を外します。怒りが強い薬剤、不安が出やすい薬剤、抑うつが目立つ薬剤、サイクル後に崩れやすい薬剤は同じではありません。
AASでは依存や離脱期の抑うつが問題になります[1]。サイクル後には低ゴナドトロピン性性腺機能低下が続き、疲労、性機能低下、抑うつが残ることもあります[2][3]。一方で、個別薬剤の細かい精神症状は研究データが薄く、公開フォーラムの自己申告は発生率ではなく症状パターンの参考情報として読む必要があります。
参考にした公開フォーラム
以下は、薬剤名とメンタル症状が結び付いていた自己申告スレッドです。発生率や医学的因果を示すものではなく、どの薬剤でどの症状が語られやすいかを見るための参考ログです。
- Trenbolone(Tren)専用スレッド
- Worst mental health cycles
- 薬剤別のmental benefits/sides共有スレッド
- Testosteroneとhormonal optimizationのメンタル影響
- Anavar / Oxandrolone専用スレッド
- Deca vs Primo(MESO-Rx)
- SARMsのemotional/psychological side effects
- LGDによるdepression報告(AnabolicMinds)
- Ostarine and depression
- MK-677 / Ibutamoren anxiety
薬剤別の症状パターン
| 薬剤・カテゴリ | 目立つ症状 | 読み方 |
|---|---|---|
| トレンボロン | 易怒性、怒り、不眠、性衝動、嫉妬、パラノイア様の疑念 | 急な性格変化と睡眠破壊が重なりやすい高リスク群 |
| ナンドロロン系(Deca/NPP) | 抑うつ、無気力、嫉妬、執着、関係性への疑念、不安 | 怒りよりも沈み込みと対人面の歪みが目立ちやすい |
| Equipoise / Boldenone | 不安、パニック様症状、胸部不快感への過敏 | 人格変化より anxiety として語られやすい |
| テストステロン | 活力・自信の上昇、少数で短気・過覚醒 | 単体では改善体感も多いが、高用量やE2変動で崩れる |
| Anavar / Oxandrolone | irritability、不安、寝つき悪化、軽いPCT期の落ち込み | マイルド扱いでも睡眠と不安の変化は起こりうる |
| Masteron / Primo / Proviron系 | confidence、well-being、少数で不安・易怒性 | 低E2側の不調やDHT系の刺激感と混ざる |
| Halotestin / Mibolerone / 強い経口剤 | 怒り、攻撃性、感覚過敏、短時間のrage | 競技前の刺激目的で語られやすく、日常生活とは相性が悪い |
| RAD-140 | 急な不安、パニック、気分変動、抑うつ、brain fog、離人感 | SARMs内ではメンタル悪化報告が濃い |
| LGD-4033 | 抑うつ、無気力、快感低下、ベッドから出にくい感覚 | 「軽いSARM」の印象と抑うつ報告の落差が大きい |
| Ostarine / MK-2866 | 抑うつ、不安、自己否定、既存不安の増悪 | 軽い扱いでも既存メンタル不調がある人では崩れやすい |
| MK-677 / Ibutamoren | 夜間不安、パニック様症状、低血糖様の体感 | SARMではないが、SARM文脈で精神症状の訴えが多い |
トレンボロンは怒りと不眠が同時に出やすい
トレンボロンの自己申告では、怒り、短気、衝動性、嫉妬、性衝動、不眠、パラノイア様の疑念がまとまって出る形が多いです。単なる「気が強くなる」ではなく、睡眠が壊れ、対人場面の解釈が攻撃的になり、恋愛や仕事のストレスが増幅される形です。
このタイプでは、本人の主観では判断が遅れます。周囲から「別人みたい」「怒りっぽい」「疑い深い」と言われた時点で、すでに生活面への影響が出ています。高用量、長期化、刺激薬、減量終盤、不眠が重なるほど危険度は上がります。
ナンドロロン系は抑うつと関係性の歪みが目立つ
DecaやNPPでは、怒りよりも抑うつ、無気力、嫉妬、執着、パートナーへの疑念、関係性への妄想的な解釈が語られやすいです。トレンボロンのような分かりやすいrageではなく、気分が沈む、相手の行動を疑う、確認行動が増える、という形で進むことがあります。
19-nor系では性機能、プロラクチン関連、E2、睡眠、抑制が絡むため、精神症状だけを切り出して読みにくいです。性欲低下や勃起不全が同時に出ると、自己評価の低下や関係不安も増えます。
Equipoiseは不安として出やすい
Equipoise / Boldenoneの自己申告では、怒りや人格変化よりも、不安、パニック様症状、心臓への不安、胸部不快感への過敏が目立ちます。動悸や血圧、ヘマトクリット、カフェイン、睡眠不足が混ざると、体感としては「危ない感じ」が強くなります。
この系統では、メンタルだけでなく心血管側の確認が重要です。不安だと思って放置するのも、逆にすべてを心臓病と決めつけるのも危険です。
テストステロンは改善体感と悪化体感が分かれる
テストステロン単体では、気分、活力、自信、性欲が改善したという体感が多く語られます。一方で、高用量、E2の急な変動、睡眠不足、刺激薬併用では、短気、過覚醒、ロードレイジ、衝動性が出ることがあります。
テストステロンで崩れる場合、薬剤そのものだけでなく、E2が高すぎる、AIで下げすぎる、注射間隔でピークと谷が大きい、減量で睡眠が悪い、といった要素も確認します。
SARMsは軽い印象と精神症状がズレる
SARMsは未承認製品として流通し、FDAも若年層への使用に警告を出しています[4]。実際の自己申告では、RAD-140、LGD-4033、Ostarineでメンタル症状が語られます。
RAD-140では、急な不安、パニック、気分変動、抑うつ、brain fog、離人感に近い訴えが目立ちます。LGD-4033では、抑うつ、無気力、快感低下、生活機能の低下が語られます。Ostarineは軽い扱いをされがちですが、抑うつ、不安、既存メンタル不調の増悪として出ることがあります。
MK-677はSARMではありませんが、SARMユーザーの文脈で夜間不安、パニック様症状、低血糖様の体感と結び付けて語られます。睡眠が深くなる体感と、不安や食欲、血糖感覚の乱れが同時に出る人がいます。
比較で見るべき軸
薬剤比較では、強さだけでなく症状の型を分けます。
| 比較軸 | 高く見やすい薬剤・文脈 |
|---|---|
| 怒り・攻撃性 | トレンボロン、Halotestin、Mibolerone、強い経口剤 |
| 不安・パニック | Equipoise、RAD-140、MK-677、刺激薬併用 |
| 抑うつ・無気力 | ナンドロロン系、LGD-4033、Ostarine、サイクル後の低T |
| 嫉妬・執着 | トレンボロン、ナンドロロン系 |
| 不眠・過覚醒 | トレンボロン、高用量テストステロン、減量終盤、カフェイン過多 |
| PCT期のクラッシュ | HPTA抑制が強いサイクル、長期使用、PCT不全 |
まとめ
ロイドレイジだけを見ると、AAS/SARMsのメンタル副作用を狭く見すぎます。トレンボロンは怒りと不眠、ナンドロロン系は抑うつと関係性への疑念、Equipoiseは不安、RAD-140は急な不安と気分変動、LGD-4033は無気力・抑うつとして語られやすいです。
公開フォーラムの自己申告は発生率ではありません。それでも、症状が出たときに「自分の性格の問題」だけで片付けず、薬剤、用量、睡眠、E2、プロラクチン、HPTA抑制、刺激薬、生活ストレスを同時に見るための実用的な地図になります。
出典
- Kanayama G, et al. Treatment of anabolic-androgenic steroid dependence: emerging evidence and its implications. Drug and Alcohol Dependence. 2010;109(1-3):6-13. (DOI / Overview) ↩
- Kanayama G, et al. Prolonged hypogonadism in males following withdrawal from anabolic-androgenic steroids: an under-recognized problem. Addiction. 2015;110(5):823-831. (DOI / Overview) ↩
- Solanki P, et al. Physical, psychological and biochemical recovery from anabolic steroid-induced hypogonadism. 2023. (PubMed Central / Overview) ↩
- FDA. FDA warns against use of SARMs among teens, young adults. (fda.gov / 2023 / Overview) ↩